2018.06

ノー・エクスキューズ

全米オープンを戦う武器として調整してきた松山英樹のエースドライバーのヘッドが開幕前日に割れた。「かなりショックだったはずですよ」と周囲は彼の胸中を気遣った。
実戦初使用のドライバーを握った初日は5オーバーを喫して出遅れた。しかし、松山は「なんとかやり切った。(3ホール目で)フェアウェイに行ったので、もう大丈夫と思ってやった」。言い訳は一切しなかった。
2日目にやや巻き返し、さらなる浮上を心に誓った3日目。シネコックヒルズのグリーンは干上がり、多くの選手が「プレー不能だ」「アンフェアだ」と不満の声を上げた。松山も二度の4パットを喫し、79を叩いて後退。それでも彼は「みな同じ条件でやっている」「アンダーで回っている人もいる」としか言わなかった。
最終日は大量の水が撒かれてグリーンが柔らかくなり、ピン位置も易しくなるなどコースの状況は様変わり。だが、松山は何がどう変わろうとも「選手は与えられた場所でやるしかない」と潔かった。言いたいことはあっただろう。泣きたいぐらい辛い想いも、大声で叫びたい衝動に駆られた瞬間も、きっとあっただろうと思う。だが、松山は一貫してノー・エクスキューズ。黙って耐えて、ゴルフでモノを言ってみせる。そんな彼の信念が伝わってきた4日間だった。
頑張った人こそが報われるのだとすれば、歯を食いしばった全米オープンの先には、きっと実りが待っている。そう信じつつ、松山にエールを送りたい。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。