2018.04

たった1つの期待

松山英樹の2018年マスターズは「期待はゼロ」から始まった。すべてにおいて「頼りになるものがない」。開幕前、松山は伏し目がちに、そう言った。それでもやっぱり目指すは優勝?「そりゃそうです」と彼が即答したことに、ほんの少しだけ安堵した。
いざ試合が始まると、ショットもパットもなかなか上向かず、優勝争いに絡むことなく19位。だが「こんな小手先ゴルフで、よくここまでやっている。すべてが悪い状況で、よく4日間できた」と松山は自己評価した。
2月に左手をケガしてからは、その状況下で自分ができることに最善を尽くしてきた。予選通過して4日間プレーできたのは「その成果だと思う」。彼の今年のマスターズは「よく頑張ったなあ」で幕を閉じた。
自分に厳しい松山がそうした言葉で自分を褒めるのは珍しく、だからこそ今の彼が胸にしまっている苦しさが逆に伝わってきた。
それでも松山は「痛い」「苦しい」とは言わなかった。しかし、悔しい想いは「それは、あります。まだ最終組が9番ぐらいを回っているとき、こうして(自分は)インタビューを受けるような状況は到底納得できない」
たとえ何がどうであろうと「勝てなかった時点で悔しい」。目指すはサンデーアフタヌーンに優勝争いを演じ、そして勝つこと。松山は自身のたった1つの「期待」を、次なるメジャー、全米オープンに向けて、これから膨らませていく。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。