2017.08

だからこそ、リカバリー

松山英樹が通算5勝目を挙げたブリヂストン招待は、彼にとって米ツアー出場100試合目だった。その翌週、全米プロで47歳のアーニー・エルスがメジャー出場100試合目の節目を迎え、盛大な祝勝会見が開かれた。
その2人が全米プロの予選2日間をともに回り、36ホール目の18番ではフェアウエイを並んで歩きながら言葉を交わした。エルスいわく、「僕もそうだったけど、メジャーで勝つ者は他選手より秀でた何かを持っている。ヒデキには優れたリカバリー力がある」。
そうやって激励されたことは松山にとって運命的な出来事になる。そんな予感がした。
最終日。松山は単独首位に浮上した。だが、11番の第2打をミスしたことで心を乱し、そこから先は「立て直せなかった」。5位に甘んじ、「不甲斐ない」と悔やし泣きした。
しかし、エルスだってメジャーの勝率は100分の4。松山のメジャー出場はまだ21試合。21が100になるまでには、あと20年もある。焦ることはない。敗北しても、悔しさを糧に立ち直り、勝利することができれば、それは最大で最高のリカバリーになる。
「ヒデキには優れたリカバリー力がある」
なるほど、エルスのあの言葉は惜敗からリカバリーして勝利する力のことを意味していたのかもしれない。運命の神様は、すべてをお見通しで、あの日、2人を一緒に歩かせた。
そんな物語が、私の頭の中に浮かんできた。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。