2017.06

刹那的な熱さより、安定した強さを備える世界一の猛者へ。

昨秋から次々に勝利を重ね、今春のフェニックスオープンで大会2連覇を達成したとき、松山英樹は「今、この地球上で最もホットな選手」と謡われた。だが、その直後から不調に陥り、試行錯誤も努力も続けたが、辛そうな顔を見せる日々は予想以上に長引いていた。
好調の波が不調の波に突然変わった陰で、逆の変化も起こった。マスターズ3日目を終え、「チャンスはない」と肩を落としたが、最終日は67で猛チャージ。波を上向かせた経験と実感は彼の中に根付き、松山はそれを全米オープンで開花させた。
初日82位と出遅れた松山に「悔しい?」と尋ね、「最悪です」と彼が吐き捨てたとき、これはチャンスかもしれないと秘かに思った。「最悪」は悔しさが「最大」と同義語だ。最大化されたエネルギーが機動力になれば、大きな波を一気に上向けることも可能になる。
松山はその波を起こせると信じていた。だからこそ、2日目と最終日の猛チャージへ、全米オープン2位へとつなげることができた。
「2日間はいいプレーができた。あと2日間の良くない日をもう少しいいスコアで回れるようになったらチャンスは増える」
上下動する波を沈めていく。「一様な波」は、別名「安定」。刹那的な熱さより安定した強さを備える世界一の猛者へ。松山英樹はそんなプロゴルファーになりつつある。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。