2016.06

二極間の距離

松山英樹はゴルフ一筋で生真面目で愛想がないと思われているふしがある。だが、彼の 素顔は茶目っ気たっぷり。つい先日も米ツアーでこんな出来事があった。
日本メディアがある日本人選手の囲み取材を行なっていたときのこと。すぐそばに居合わせた松山は突然、悪戯っ子のような笑みを浮かべながら取材中の記者陣の列の中に入り込み、記者のモノマネを始めた。
それがなかなか凝っていて驚いた。前方に立つ記者の邪魔にならないよう体をちょっぴりくねらせながら、ICレコーダーに見立てたティペグを握る手だけは前へ前へと差し出し、取材を受けている選手のほうへ視線をやりながら何度も「うんうん」と頷いてみせた。
それはまさに松山の観察力の表われだった。取材を受けているときでさえ、これだけ緻密に記者たちの動作を観察しているのだから、試合中、コース上で発揮している観察力は、この何倍、何十倍に及ぶはず。
大胆なようで緻密、無愛想なようで人懐っこい。そんな松山の人柄は彼のゴルフにそのまま反映されている。淡々と静かにパーを拾い、好機到来と見て取れば一気に攻める。
静と動。攻めと守り。二極間の距離をフル活用できるからこそ、可能性は必ずや最大化されていく。松山英樹の強さは、そこにある。

文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

早稲田大学政経学部卒業後、百貨店勤務、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。
学生時代に行っていたゴルフ経験を活かしてゴルフジャーナリストへ。1993年に渡米。米国に常駐し、米ツアーを中心に取材活動を行なう。自身にコーチをつけてゴルフを本格的に練習するなどプレイヤーとしての視点も持ち合わせ、ツアープロや関係者たちからの信頼も厚い。新聞や雑誌、ゴルフ専門誌等で執筆する他、ラジオや講演など多方面で活躍中。